職場の空気を牛耳るのは、肩書きでも年次でもなかった。
それは、“何かを見抜いた者が、黙っているかどうか”で決まる。
六月の終わり。
昼下がりのデスクはいつも通りの風景に見えた。
けれど、私はひとつの数字に視線が止まり、そこから目が離せなくなった。
担当の顧客の退職日が「6月30日」となっている。
だが、明らかにそれより早く勤務を止めていた記録がある。
出勤ができなくなり、法人に相談したが休職はできないと伝えられた、というやり取り。
その後は復帰の意思を示さず、音沙汰もなかった。
私はその退職処理を担当した社員の顔を思い浮かべた。
三田。23歳。新卒2年目の営業社員。
年齢相応の初々しさではなく、妙に“場慣れした風”の身のこなしをする若手。だが見た目は入念に可愛くしている。髪の長さはは腰まである。
口調も物腰も、「わかってる後輩」を演じているようで、
ただ、演技の精度はあまり高くなかった。
メイクはきちんとしている。
身だしなみも、報告の仕方も、表面上は何の問題もない。
だが、提出されたデータの“その先”に、私は不自然さを感じた。
数日後、三田の名前で返金申請が提出された。
申請日は7月。
だが、処理の対象となる退職日は6月。
これは、営業成績の集計タイミングをまたいで処理されたということだ。
つまり、**半期の評価には“マイナスされない返金”**として処理される。
しかも分割処理。2回に分けて、返金の一部を“翌期扱い”にしている。
これが偶然であるとは、到底思えなかった。
わざと“期をずらした”
自分の評価や賞与を守るために。
求職者の情報を加工し、事実の退職時期を隠して。
私は、社内ホットラインに通報した。
匿名で、端的に、事実だけを。
私は正義の味方じゃない。
裁くつもりもない。
ただ、こういう歪みを見逃せないだけ。
人の評価が、他人の人生を犠牲にして成り立つなら、
それは組織の癌だ。
その初期症状を、黙って飲み込むほど、私はお人好しじゃない。
黒革の手帖の余白に、ひとつ、名前が加わった。
三田。営業。新卒2年目。
記録は、静かに始まった。
そして、本日の朝ごはんはこちら。土日もお仕事🎡🏃♀️💨 頑張れ私!



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