「ちょっと、お願いできる?」
女がそう切り出すとき、大抵は何かを“省略”している。
手間、責任、そして——自分の本音。
河原悠。43歳。元キャバ嬢を自称するこの女は、
可愛い顔に不釣り合いな、だるまのような体型をしている。
本人曰く、“戦略的なデブ”。
その意味が何かは、正直どうでもいいけれど、
彼女の言動を見る限り、確かに“戦略”で生きている人間だということは伝わる。
髪は肩につくくらいのオレンジのストレート。
その色合いだけでも十分目を引くが、
何より目立つのは、彼女の“存在感”そのものだ。
いつも荷物は人の3倍。
リュックにトート、紙袋。
もはや彼女が来るだけで、フロアが1つ狭くなる。
デスクは常に荒れ地。
ペンとファイルとメイク道具とキャラもののグッズが、雑然と積み上がっている。
「メイク道具見ると、気分アガるやん?」と彼女は笑う。
周囲の目を気にする、大阪のおばちゃん気質が全面に出たその言葉に、
私は思わず苦笑いを浮かべる。
——正直、それ、全然“上がって”見えないんだけど。
そんな彼女が、ある日こう言ってきた。
「第五の女の子にこっそり言うといて。Tバックのライン見えてて、谷川さんが見てニヤニヤしてんの。セクハラやから、透けないように気ぃつけてって」
まるで“女同士の助け合い”のようなトーンで。
違う。
これは、助け合いなんかじゃない。
ただの**“盾にされた伝言ゲーム”**だ。
私に言わせれば、この女の“頼みごと”ほど危険なものはない。
名前も明言せず、タイミングも曖昧、
しかも伝える相手が合っていなければ、
こちらがセクハラの加害者になる。
仮にそれが事実だったとしても——
女の下着事情を、職場で第三者から伝えるなんて、
正義の皮を被ったナイフと同じ。
綺麗ごとに見せかけた“地雷”だ。
だから私は、笑顔で線を引いた。
「こういう内容は、河原さんから直接お話された方が確実かと思います☺️」
すると彼女はこう言った。
「仲良いんやろ?お互い守り合わなあかんって、そう思うで」
——まるで、
“断るあなたは冷たい”とでも言いたげに。
その言葉を聞いた瞬間、私は思った。
この女は、口角を上げながら、人を試している。
職場という小さな劇場で、
“善意”を演じながら、
他人の足元を見ている女の存在こそ、
本当の意味で、恐ろしい。
私は、今日もまた黒革の手帖を開く。
一人の名前を、そっと書き加える。
“河原悠”
その筆跡は、いつにも増して濃く、力強かった。
……と、私は“その場”をやり過ごしたつもりだった。
だが、物語は勝手に動き出す。
後日、河原さんからこんなメッセージが届いた。
「大田さんが三人に言ってくれたみたいだけど、どうやらその三人じゃなかったっぽい。。」
——まるで他人事のような文章に、私は目を細めた。
誰が誰に、何を伝えたのか。
そもそも“誰のこと”だったのか。
それすら曖昧なまま、
この件は「自衛する流れにはなりそうです!」という一文で、幕が引かれようとしていた。
責任はふわりと拡散され、
誰が何をしたか、誰も明言しない。
けれど、その影にはひとつの事実が残る。
**私が巻き込まれかけた“伝言という名の地雷原”**の存在だ。
「伝えてくれたみたい」「違ったかも」「でも皆で気を付けよう」
そうやって、女たちは善意という包装紙で、
爆弾を送り合う。
私の黒革の手帖には、
今日もまた、インクがにじんでいた。
「守り合いましょう」
そう言う女ほど、誰より先に人を売る。
そして、今日は先月のクレジットカードの支払いにATMに寄って106万円を支払い、来週末の旅行に向けてお風呂セットを無印良品で、パジャマや靴下をGUで買ってきた。
そして、脱毛サロンに通うか迷うためにカウンセリングに寄る。仕事が終わる18:30ごろから全てこなした。
もう自分でご飯を作るほどの元気はなかったので、フレッシュネスバーガーで、ポテトだけ頼んだ。サワーディップがガーリックマーガリンみたいで美味しい♡


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