ギャンブル場に足を踏み入れると、人はみな同じ顔をする。

勝ちたい顔、取り返したい顔、誰かに負けたくない顔。だが、その日私の前に現れたのは、さらにもう一枚上を行く「顔」を持つ男だった。

午前九時十五分。キャンペーン開始の合図とともに、客たちが一斉に押し寄せてきた。

私は、景品カウンターでメガネクリーナーを配る係を任されていた。

もっとも、あの意地悪チーフからは「一人で全部やれ」と丸投げされた。

職場の序列を見せつけたいのか、それとも私を潰したいのか。だが私は反抗の意味も込めて、黙々とこなすことにした。

 そんな混乱の中、クリーム色のTシャツに青いキャップをかぶった、身長一八〇センチほどの男が現れた。差し出された引換券を受け取った瞬間、私は違和感を覚えた。ほんの少し分厚い。だが印字もサイズも、これまで百枚以上さばいてきた券と寸分違わぬ出来栄え。

「これ、どこで印刷しました?」私は思わず尋ねてしまった。

 「ここでだよ」男は淡々と答える。

私にできたのは、「ああ、そうですか」と笑顔を貼り付けることだけだった。下手に疑ってクレームに発展すれば、矛先は私に向かう。

彼は出口からそそくさと出て行った。

けれど職場に一人、見逃さない目を持つ者がいた。

六十代の元警察官、小出責任者。報告を受けた彼は、五分後には怒鳴り声を響かせていた。

一度出口から出て行った男は、またまた他も持ってきたのだ。

「おいコラ!これはどこで印刷した!」

逃げ腰の男を、肩掛けバッグごと鷲掴みにする小出。もみ合う二人。

だが奇妙なことに、男はまるで別人のように姿を変えていた。青いキャップはハットに、素顔は縁取りメガネに。服も背丈も同じなのに、誰もが一瞬ためらう。まるで手品師のように「偽りの顔」を切り替えていた。

駆け寄ってきたのは、例の意地悪チーフだった。興奮した様子で私の肩を叩き、「元子ちゃん!あれ犯人で間違いないよねえ?」と指を突き立てる。

まるで他人の不幸を肴に酒でも飲むような声色。ここでは、誰かの罪よりも、誰かを陥れる瞬間の方が甘美に味わえるらしい。

結局、男のバッグからは四つの景品と偽造機材一式が出てきた。

カッターにカッターマット、印刷機。

前日から景品が不足していた理由も、この男の仕業だと知れた。だが経営側は、大ごとにはしたくなかったのだろう。

偽物を見抜けなかった失態を世間に晒すよりも、ひっそりと契約を無効にして立ち入り禁止にする方が都合がいい。

 感謝の言葉もなく、事件は曖昧な幕引きとなった。紙切れ一枚で、客も職員も、そしてシステムすら翻弄されたのだ。

 偽造券を差し出したあの男は、きっとこう思っていたに違いない。

 「本物か偽物かなんて、大事なのは当たりを引けるかどうかだけだ」と。

 だが、私の目には違って映った。

本物よりも偽物を信じる――そんな生き方こそが、彼の最大の敗北だったのだと。

帰りにご褒美としてドーナツ食べた♡

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