朝の8時00分。
タイムカードを押した瞬間、空気の重さが肌にまとわりつく。
今日もまた、低所得者の巣窟のような職場で一日を過ごすのだと思うと、背筋がすっと冷える。
「PayPayで投資してるんです〜!」
「ドコモのポイントで買えるやつ、やってるよ〜!」
彼女たちは誇らしげに語る。
けれど投資額は数円単位。
その一方で、毎月十万円近く“推し活”に費やしているという。
お金の使い方に、その人の未来が透けて見える。
私はただ、黙ってコーヒーを飲む。——砂糖なしで。
朝から漂うのは、揚げ物と惣菜の匂い。
コンビニのホットスナックを頬張りながら「太りやすい体質でさ〜」と嘆く彼女たち。臭うな。
太る理由は、もう体質ではない。
私はいつもの朝ごはん🥐

そして今日も、“朝青龍”のような女の全否定が飛ぶ。
私の言葉を一つも受け入れようとしないその圧。
彼女の視線の中では、誰もが敵だ。
休憩中、平成初期のメイクをした女が家庭の話を始めた。
金髪にストパー、アイラインで目を囲い、眉は細く吊り上がっている。人間で言うと、体型は舞の海。
彼女の母親は、鉄工所の父親が雇ったバングラデシュ人と不倫したという。
その男がキャバクラの店長になり、三人で暮らすようになった。
だがその男はロシア人の少女と浮気して子供を作り、全員で貧乏なアパートに同居したのだとか。
彼女は笑いながら「その子、真っ黒だったの」と言った。
私は笑えなかった。
狂気と貧困が混ざると、人は“物語”を語るようになるのかもしれない。
仕事終わり。
疲れ果てた体を甘やかすように、近くのカフェでパンプキンスパイスラテを飲んだ。

静かで、幸せな数分間だった。
だが次の予定——脱毛サロンは、また別の地獄だった。
ここのサロンには通い始めて4回目。
入ると、椅子に座る5人のスタッフ。
誰も挨拶をしない。
床には髪の毛、トイレも汚れ、スタッフの髪は乱れたまま。
無表情で背中を丸め、パソコンと睨み合う姿に、
“人の身体を扱う仕事のはずなのに、心はどこかに置いてきた”ような空気が流れていた。
そして施術が始まると、何の確認もなくOラインを照射しようとした。
慌てて止めると、お姉さんは「え?」とだけ言って手を止めた。
悪びれる気配は、ない。
全裸で横たわる私は、もはや客ではなく“素材”のようだった。
終わった後、ベッドにはジェルの跡。


ロッカーを開けると、前の客のマスクが落ちていた。
伝える気力もなく、私は黙ってロッカーを閉じた。
帰り際、「お部屋の中、確認しましたが忘れ物ありませんでした!」と笑顔のスタッフ。
私は一瞬だけ言いかけて、やめた。
——本当に忘れ物がないのは、どちらかしら。
こんな事になるなら、お家で丁寧に脱毛した方が気が楽だわ。
いつか敷地の広い家に住んだら、駐車場貸し出しの副業やりたいなぁ。
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